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月は太陽がないと輝けないんだ

「おい、ハチ。」
「んー、なんだー?」

声では返事をしているが、竹谷八左ヱ門は鉢屋三郎の方に意識を全く持ってきていない。
竹谷は今、委員会で使用する虫かご(虎若が壊した)の修繕中であった。
そもそもが細かいことの得意な男ではないから、他のことには純粋に手が回らないだけだろう。
けれども、鉢屋はしつこく名前を呼ぶ。こちらに意識を向けろと、言外に言っている。

「ハチ。なあ、ハチったら。」
「あーもー、なんだよ三郎。俺今忙しいんだけ」

ど、と言えないまま、鉢屋は振り返った竹谷に口づけた。
いきなりすぎて竹谷はついて行けていない。

「…どうしたんだよ、いきなり。そんなに寂しかったのか?」
「ハチは私と居るときは私に構っているのが仕事だろ。」
「なんだよそれ、横暴じゃねーか」

なんでもない、くだらない会話で笑う二人。
静かに笑う鉢屋と、快活に笑う竹谷。
まるで、月と太陽のような。

「なあハチ、知ってるか?」
「うん?なにを?」
「あのな、」

月は太陽が居ないと輝けないんだ。

凌弥ちゃん誕生日捧げ物
竹鉢
どうしてこうなった